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ピクリとも動かない私のそばに腰を下ろし、母が私の手を握っている。
「っあ」
不意に母の鞄でスマホが振動し、母は慌てて病室を出て行った。
誰かから電話? お父さんかな?
何気なく自分の体に近付いたとき。急にプツンと音がし、何となく体が軽くなった。
《やぁ、ちゃんと戻って来たね?》
『っあ、天使!』
《見つけた指輪は……あの彼氏くんが拾ってくれたんだね、良かったね》
ありがとう、とお礼もそこそこに、私は気になっていたことを尋ねた。
『なんでさっき、急に消えたの?』
《うーん……別に消えたわけじゃないよ?》
『えぇ??』
《ただ、キミには天使の存在が見えなくなっただけで、ボクはあのあとしばらくキミ達を見ていたんだよ》
『私には見えなくなったって……一体どうして』
天使の言っていることがいまいち理解できず、首を捻った。
《……“想いの糸”がもたらした作用だよ》
『おもいの、糸?』
聞き慣れないワードに更にハテナが増える。
《そう。互いに想い合う相手がそばにいると現れる糸で、その糸と結ばれた相手には霊体であるキミが見える。反対に、キミはそれまで見えていた天使が見えなくなる、そんな働きをする糸だよ?》
『そう、なんだ』
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