ep4.リングをひろって

14/18

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
 その糸で繋がっていたのは、おそらく湊だろう。湊が私に近付いて、糸が出現したから天使が見えなくなった。 《因みに、それまで魂の姿だったのに、外見が人に変わったのも糸のせいだよ。心臓が拍動をやめてしまった場合、つまり死体となってしまったら、糸は現れないんだけどね》  天使は専門用語を注釈するように補足した。説明に関しては、『へぇ』としか答えようがない。 《しかし、キミは運が良いね?》 『え?』 《今回上からの落下物はキミの頭部をかする程度で済んだみたい。当たりどころが悪ければ、即死だったよ?》 『そう……なんだ。ハハ』  即死と聞いて、背筋に冷や汗が浮かんだ。 《それじゃあ。お喋りはここまでにして、ちゃんと本体に還ってね?》 『え、でも帰るってどうやって』 《眠っている本体と同じように重なれば戻れるよ。次はキミが亡くなったとき、正式に迎えに来るから。それまで彼氏くんと仲良くね?》  そう言って天使は私の病室から出て行こうとした。 《あ、言い忘れたけど……》  不意に足を止め、天使が振り返る。 《目が覚めたとき。魂や霊体でいた頃の記憶は消えちゃうからね? 彼氏くんも同様に》  ……っえ。  私は自分の体に寝そべり、そこから先の映像はプツンと途切れ、見えなくなった。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加