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その糸で繋がっていたのは、おそらく湊だろう。湊が私に近付いて、糸が出現したから天使が見えなくなった。
《因みに、それまで魂の姿だったのに、外見が人に変わったのも糸のせいだよ。心臓が拍動をやめてしまった場合、つまり死体となってしまったら、糸は現れないんだけどね》
天使は専門用語を注釈するように補足した。説明に関しては、『へぇ』としか答えようがない。
《しかし、キミは運が良いね?》
『え?』
《今回上からの落下物はキミの頭部をかする程度で済んだみたい。当たりどころが悪ければ、即死だったよ?》
『そう……なんだ。ハハ』
即死と聞いて、背筋に冷や汗が浮かんだ。
《それじゃあ。お喋りはここまでにして、ちゃんと本体に還ってね?》
『え、でも帰るってどうやって』
《眠っている本体と同じように重なれば戻れるよ。次はキミが亡くなったとき、正式に迎えに来るから。それまで彼氏くんと仲良くね?》
そう言って天使は私の病室から出て行こうとした。
《あ、言い忘れたけど……》
不意に足を止め、天使が振り返る。
《目が覚めたとき。魂や霊体でいた頃の記憶は消えちゃうからね? 彼氏くんも同様に》
……っえ。
私は自分の体に寝そべり、そこから先の映像はプツンと途切れ、見えなくなった。
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