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唇が震える。指輪を受け取り、彼の丸い瞳を見つめ返した。
「うーん……? 探したっていうか」
曖昧に首を捻る湊を見て、キョトンとなる。彼が言わんとしていることが分からない。
「探しに行こうと思ったのは確かなんだけど。気付いたら手の中に握ってた、ってのが正解かな。なんか、拾ったときのこと。あんまり覚えてなくて」
「……そう」
それでも、私が一方的に投げつけた指輪を、彼が探して持って来てくれたのが嬉しい。
「ありがとう」
私は大切なそれを手で握りしめ、俯いた。愛おしいという感情がふつふつとわいてきて、目に涙の膜が張る。瞬きと共に、丸い粒がひとつふたつとこぼれ落ちた。
「っ本当は、別れたくなんかないのっ」
「……うん」
湊の温かい手が優しく頭を撫でてくれる。
「それ聞いて安心した」
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