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◇ Epilogue
それから数日後。私は退院日を迎えた。病院で退院の手続きをする母と帰路を別にし、湊と手を繋いでゆっくり帰ることにした。
途中、公園に寄り、噴水近くのベンチに腰を下ろした。清々しい夏空が頭上いっぱいに広がり、大きく深呼吸をする。右手の薬指に嵌めたシルバーリングを見つめ、自然と口角が上がった。
「退院おめでとう」
自販機で買ったオレンジジュースを差し出し、湊が隣りに座った。
「うん、ありがとう」
「あと。二十一歳の誕生日おめでとう」
彼の台詞にキョトンとなり、目を瞬く。
「あ、今日……?」
「うん、七月二十日。澪の誕生日」
覚えててくれたんだ。湊は鞄の中を探り、ピンク色のリボンが掛けられた手の平サイズの箱を「どうぞ?」と言って手渡した。
「ありがとう。開けるね?」
彼が頷くのを見てから蓋を開ける。小さな赤い石が埋められたハートのネックレスだった。
「……可愛い」
「だろ? いかにも澪っぽいと思って」
得意げに笑い、湊が実際に付けてくれる。
「うん、似合ってる」
「ありがとう」
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