ep4.リングをひろって

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 私はスマホを出し、手帳型カバーに付いた鏡で胸元を確認した。赤いルビーがキラリと光る。わざわざ誕生石とか調べてくれたのかな。  湊がこのネックレスを選んだ場面(シーン)を想像し、クス、と笑みがもれる。 「あのさ」  不意に湊が改まった口調で言った。 「澪に誤解された日、なんだけど。実はそのプレゼントを買うのに、兄貴たちに付き合ってもらったんだ」 「え。お義姉さんだけじゃなくて?」 「ああ。澪に見られたときは、たまたま兄貴が飲み物買いに行ってたときで。本当は三人で出掛けたんだ」 「……そうだったんだ」  ということは。やっぱり浮気は私の思い込みで、勘違いだったというわけか。一人で躍起になっていた自分が急に恥ずかしくなった。 「あの、お義姉さんってどんな人?」 「どんな……、うーん? 気さくで変わった人だよ。花純(かすみ)さんって言うんだけどさ、仕事が特殊で……とにかく兄貴がベタ惚れしてる」 「へぇ。今度紹介して欲しいな」 「いいよ。向こうも澪に会いたがってたからさ、喜ぶと思う」  目を細めた湊の顔がすぐ近くに寄せられ、瞼を閉じる。キスの感触が心地よくて、噴水の水音も蝉の鳴き声も、遥か遠くに聞こえる。  目を開けたとき。右手の薬指に填まったシルバーリングが、キラリと強い輝きを放った。  〈了〉
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