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投稿はこれで三度目なのに。三度目の正直ならず、選外。つまりはアウトオブ眼中。やっぱり才能ないんだろうな、とモチベーションが下がる。せめて、小さな賞にでも引っかかったら、少しでも自信が持てるのに。
そう考えたところで、親に何て言おう、と考える。普段から漫画を描くことにさほど厳しい両親ではないが、漫画家になるのが夢だと告げたとき、父も母も困ったように呆れていた。
優秀な兄二人を持つ私は、クラスの平均点あたりをうろうろする不出来な末っ子だ。来年には受験も控えているし、そろそろ漫画での実力も少しはあるんだぞと示したかったのだが……。また選外。
「まぁまぁ。そう気を落としなさんなって」
キョンちゃんは私を慰めるのに慣れているのか、奥二重の瞳を細めて笑い、日頃から通学鞄に忍ばせているポッキーの箱を開けた。「食べな」と差し出されると、ついつい手を伸ばしてしまう。私の好きなつぶつぶ苺のポッキーだ。
ふと、右側にある窓から初夏の日差しが差し込んだ。今日部室に顔を出しているのは、私とキョンちゃんのふたりだけだ。
教室の半分ほどしかない狭い部室は、廊下から入って突き当たりに窓があり、右手には大きな本棚が立っている。棚の上段にデジタル時計が置いてあり、pm4:18となっていた。
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