前園 美晴 1

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 本棚と向き合う形でテレビとレコーダーが置いてある。中庭に面した壁には窓がひとつ。そのそばには動画撮影に使う機材が、薄く埃をかぶって立て掛けられている。  私とキョンちゃんが所属するエンタメ部は、文芸と漫画と動画を研究する部活動だ。研究、と言っても、そんな大層な活動はしていない。  活動内容はと言えば、特別これといった決まりはなくて、映画を観たり、本や漫画を読んだり、イラストを描いたりいう娯楽を、のんべんだらりと続けている。真面目な活動は学期ごとにそれっぽい冊子を作るぐらいの、かなり緩い部活だ。  部室で動画を撮って、SNSにあげるという活動をした男子も中にはいたのだが、古い機材が使いにくいらしく、早々に退部した。自分専用のものを購入したと聞いた。  部員数は、幽霊部員も含めて八名。その内、三名だけが毎日顔を出す正規メンバーだ。 「描くたびに上手くなってるよ、美晴の漫画」 「そうかなぁ」 「絵も上手くなってきてるし、台詞回しもいいと思うぞ」 「そんな。いいよ、無理に誉めなくて」 「……あたしは好きだけどな、あんたの作るストーリー」  言いながらキョンちゃんは私に目配せし、「また描いたら読ませろよな」と続けて、ひひっと歯を見せた。高い位置でポニーテールにした彼女の髪が、首を傾げた拍子にふわりと揺れる。
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