牧野 沙織 1

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「……焼き直し。マンネリ」 「同じジャンルで勝負するのは得策とは言えません。だからこそ、今が正念場なんです。新しい扉を開きましょう、先生!」 「新しい扉……」  すなわち、ジャンル変更だ。今まで恋愛中心の、キュンがたくさん詰まったストーリーを描いてきたのに、物語の系統自体を変えるべきだと選択を迫られている。 「加賀ちゃんの言うことは、もちろんわかるよ? 連載作品を描くたびに発行部数も伸びなくなったし、TALK-N(トークン)でもオワコンとか言われてるし」 「またエゴサしたんですか? やっちゃ駄目だって前に言ったじゃないですか」 「わかってるけど、気になるんだもん。だからつい……」  加賀ちゃんは苦い顔つきでうんうんと頷き、ため息をついた。 「て言うか。駄目だったんだよね? 次回作のネーム」 「はい。全く」 「連載会議にも出せないってこと?」 「はい。編集長からボツを食らったので」 「はぁ、やっぱりかぁ」  実を言うと、自信はなかった。さっき加賀ちゃんが言ったように、既存作の焼き直し……とまではいかないけれど。二番煎じかもしれないなって思っていた。  だけど、正直これは落ち込む。次の連載会議に出すための、百ページ分のネームが一瞬で泡と化したのだ。 「編集長、なんて言ってた? もしかしてイチからやり直せって?」
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