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「……焼き直し。マンネリ」
「同じジャンルで勝負するのは得策とは言えません。だからこそ、今が正念場なんです。新しい扉を開きましょう、先生!」
「新しい扉……」
すなわち、ジャンル変更だ。今まで恋愛中心の、キュンがたくさん詰まったストーリーを描いてきたのに、物語の系統自体を変えるべきだと選択を迫られている。
「加賀ちゃんの言うことは、もちろんわかるよ? 連載作品を描くたびに発行部数も伸びなくなったし、TALK-Nでもオワコンとか言われてるし」
「またエゴサしたんですか? やっちゃ駄目だって前に言ったじゃないですか」
「わかってるけど、気になるんだもん。だからつい……」
加賀ちゃんは苦い顔つきでうんうんと頷き、ため息をついた。
「て言うか。駄目だったんだよね? 次回作のネーム」
「はい。全く」
「連載会議にも出せないってこと?」
「はい。編集長からボツを食らったので」
「はぁ、やっぱりかぁ」
実を言うと、自信はなかった。さっき加賀ちゃんが言ったように、既存作の焼き直し……とまではいかないけれど。二番煎じかもしれないなって思っていた。
だけど、正直これは落ち込む。次の連載会議に出すための、百ページ分のネームが一瞬で泡と化したのだ。
「編集長、なんて言ってた? もしかしてイチからやり直せって?」
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