牧野 沙織 1

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 加賀ちゃんの、新しい扉、なる言い分を思い出すと当然そうなのだろうなと思いつつ、聞いてみる。加賀ちゃんは眉を垂れ、こくりと頷いた。 「会議(しめきり)まであと四日だったよね? それまでにプロットとネーム?」 「はい」 「嘘でしょ、寝れないじゃん」  深くソファーに腰かけたまま、体を二つに折った。頭を抱え、膝に顔を埋める。 「ジャンル変更の件なんですけど」と、あくまで冷静な態度を崩さず、加賀ちゃんが言った。 「ファンタジーとかどうでしょうか?」 「……ファンタジー?」 「はい。もちろん、恋愛要素ありの」 「って。世界観を変えろってこと? 今まで描いてきた恋愛ものと大差ある?」 「いえ。世界観はもちろん変えるべきなんですけど。恋愛要素は砂糖ひとつまみ程度におさえて、そのぶん、ヒューマン要素を濃くして欲しいです」 「ファンタジー……ヒューマン」 「羽野先生が描くファンタジーやヒューマンは、絶対ウケると思うんです」 「と言ってもなぁ……。今までに考えたこともないから。ちょっと時間もらえる?」 「それは構いませんが。明日の朝までに結論を出してください。そうでなければ、次の会議には出せませんよ。僕でよければ相談には乗るんで、いつでも電話してきてください」 「うん。わかった。ありがとうね、加賀ちゃん」
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