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加賀ちゃんの、新しい扉、なる言い分を思い出すと当然そうなのだろうなと思いつつ、聞いてみる。加賀ちゃんは眉を垂れ、こくりと頷いた。
「会議まであと四日だったよね? それまでにプロットとネーム?」
「はい」
「嘘でしょ、寝れないじゃん」
深くソファーに腰かけたまま、体を二つに折った。頭を抱え、膝に顔を埋める。
「ジャンル変更の件なんですけど」と、あくまで冷静な態度を崩さず、加賀ちゃんが言った。
「ファンタジーとかどうでしょうか?」
「……ファンタジー?」
「はい。もちろん、恋愛要素ありの」
「って。世界観を変えろってこと? 今まで描いてきた恋愛ものと大差ある?」
「いえ。世界観はもちろん変えるべきなんですけど。恋愛要素は砂糖ひとつまみ程度におさえて、そのぶん、ヒューマン要素を濃くして欲しいです」
「ファンタジー……ヒューマン」
「羽野先生が描くファンタジーやヒューマンは、絶対ウケると思うんです」
「と言ってもなぁ……。今までに考えたこともないから。ちょっと時間もらえる?」
「それは構いませんが。明日の朝までに結論を出してください。そうでなければ、次の会議には出せませんよ。僕でよければ相談には乗るんで、いつでも電話してきてください」
「うん。わかった。ありがとうね、加賀ちゃん」
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