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漫画が描きたい。これからもずっとずっと、自分の創る物語を読者に届け続けたい。ストーリーを考えているとき、描いているときが一番私らしいのに。どうしてアイディアは枯渇してしまうのだろう。
ストーリーと共に送る日々が、私の幸せで、やっと世間に認められる漫画を描けるようになったとそこそこの自信もあったのに。どうして私の頭は柔軟に働いてくれないのだろう。
「っああ、もう!」
右手の拳で頭を小突き、さっきよりも大きな嘆きがこぼれた。
ふと、視界の先に警戒を促すかのような赤色灯が見えた。パトカーと救急車が道路の傍に停まり、事故があったことを告げている。そばにはバイクが一台。警察官とドライバーの青年が話し合っている。
事故の様子を横目で捉え、慎重に車を進めた。
漫画が描きたい、とまた願う。
漫画が描きたい。私自身が納得できるかたちで……!! 次回作も連載にこぎつけたい!
強くそう願った途端、微かに車内が光ったような気がした。
今の、なに? 何かが変だ。違和感を覚える。突然の異変に狼狽えたまま、キョロキョロと視線だけを動かす。
若干、怯えた視界がバックミラーを捉えたとき。私は大きく目を見開き、ハッと息を飲み込んだ。声が出ない。大声で叫びたいのに、恐怖で喉の奥が固まったようだった。
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