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アクセルを踏む足から力が抜けて、車が徐々に低速する。プーッ、とまたクラクションを鳴らされた。
歯がカチカチと震え、左に指示器を出した。ミラーをよく確認しながら路肩に寄せ、車を停めた。
「だ、だれ……?」
熱くなった呼吸を飲み込み、ようやく声を出せた。
私の斜め後ろ、後部座席に、見知らぬ女の子が乗り込んでいた。どこか青白い姿形から察するに、幽霊だ。そうに違いない。
「あなた、だれなの? どうして私の車に……、いるの?」
それまで女の子は自分の手を見つめていたのだが、不意に顔を上げ、私に目を向けた。バックミラー越しにしっかりと目が合った。
怖い、と感じる。何せ、初めてなのだ。幽霊を見るのは。狭い車内という空間に、二人きり(?)になるのは。
『ごめんなさい。私にもサッパリ。なにがなんだか……』
女の子は首を傾げ、あどけない顔を曇らせた。髪をツインテールにした女子高生で、歳はまだ十六か十七ぐらいだろう。
『さっきそこで事故に遭ったはずなのに。気づいたらお姉さんの車に乗ってました』
そう言って、女子高生はひょいと後ろを振り返った。
「事故って。今通りかかったところ? バイクとの接触事故?」
『はい。雨が降ってたから急いで帰らなきゃと思ってて、道路を突っ切ろうとしたんです。バイクの人に申し訳ないです』
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