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『どうしてかはわからないんですけど』
「な、なに?」
『私、お姉さんから離れられません』
「……は?」
『救急車のあとを追おうと思って、お姉さんから距離を取ったら。背中になぜか白い糸が現れて。近づいたせいか今は消えているんですけど、それに引っ張られちゃって……』
「糸?」
女子高生の幽霊が右手で背中を指差していた。
『ある程度距離をあけたら、私の背中と、お姉さんの心臓の辺りを繋いでいて。全く、訳がわからないです』
「っえ、え、え!?」
ぞわりと鳥肌が立った。自身の腕をさすり、意味もなく自分の胸元を見下ろした。
「糸、だったら。切っちゃえばいいんじゃないの? ハサミか何かで」
ここで敢えて言っておく。ペンネームを羽野詩織と名乗っているが、本名は牧野沙織だ。苗字と名前を少しだけ変えているのは、本名での姓名判断が良くなかったからだ。縁起が良いに越したことはないし、私は占いや風水も手放しに信じてしまう。すなわち、心霊現象も。
何が言いたいかというと、私、牧野沙織はホラーが大の苦手だ。子供の頃から小心者でビビりなのだ。
女子高生はうーん、と眉を寄せ、首を傾げた。『材質から考えて、切れるものだとは……思えなかったです』と言って途方に暮れている。
嘘でしょ、勘弁してよ、もう……。
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