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前園 美晴 2
私は大ファンである和倉先生のデビュー作を頭に思い浮かべていた。かれこれ十五年以上前に描かれたものらしいが、先生は当時からとても絵が上手だった。
「知ってる。知ってるよ、その漫画」
私と隣り合わせに座るお姉さんが、呆然とした様子で呟いた。なぜこうなったのか。私は今、見知らぬお姉さんの車に乗り込んでいる。
「確か。うちにも置いてあった。あの人の漫画は当時からすごかったし」
うんうん、と頷いたあと、お姉さんの言葉に引っかかりを覚え、小首を傾げる。
「内容は……うろ覚えなんだけど。確か、死んだと思っていた主人公の女の子と、相手役の男の子が糸で繋がれて。しばらく共同生活をするって話だったよね」
『そうです、そのお話で出てくる糸と同じのが私の背中に付いてるんです。お姉さんから離れようとするとぐんって引っ張られて。糸が縮んで固くなるんです。漫画でも確か、そういう設定だったと思います!』
「……なんで?」
お姉さんは怪訝に眉を寄せ、呟いた。
『なにがですか?』
「なんであの人の漫画と同じようなことが起こってんの?」
『それは……わかりません。単なる偶然かもしれませんし』
当然フィクションであるはずの漫画と、なぜ同じことが起こっているのか、そういう疑問だと理解した。
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