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沙織さんは社長椅子に腰を埋め、黒い縁のお洒落な眼鏡をかけた。デスクに置いてあるパソコンを立ち上げている。インテリアのためか、そばには可愛らしい砂時計も置いてあった。わくわくしながら彼女に身を寄せ、私はデスクトップを覗き込んだ。
『っえ!! 沙織さんって……羽野詩織先生なんですか?』
「……ええ。そうだけど」
『うそーっ!! 私、先生の漫画も好きです! 男の子が毎度カッコよくてキュンキュンしてます!』
「そう、なんだ。ありがとう」
沙織さんはぎこちなく笑い、プロットと書かれたファイルを開いた。文書を作るページが開かれ、そこで沙織さんの手が止まる。はぁ、とため息が聞こえた。
「次回作のプロットを書いてから、三話分のネームを作らなきゃいけないんだけどさ。……今のところ、全くアイディアがないのよねぇ。ノープラン、なにも描けそうにない」
『……え』
「だからその前に。今起こってる状況を整理するところから始めようと思う」
『整理』と呟くと、沙織さんは頷き、おもむろに立ち上がった。本棚へと歩き、一冊の漫画を抜いて戻ってくる。
『それ。和倉先生のデビュー作の……?』
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