前園 美晴 2

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「そう。【天使と白いキズナ】。現実世界で漫画の設定を鵜呑みにするなんて、ほんと馬鹿げてるとしか言えないけど。偶然、これと同じ状況になってるのなら、どんな設定だったのか、どういう状態で糸が切れるのか。知る必要があるよね」  沙織さんが椅子に座り、漫画のページをめくった。そばに寄り、私も漫画を覗き込む。  和倉先生のストーリーに出てくる糸は、“白いキズナ”と呼ばれ、糸がもたらす作用がいくつか挙げられていた。沙織さんがデスクにある引き出しからメモ帳とペンシルを取り出し、書き留める準備をしている。漫画の設定を読み取り、箇条書きでまとめてくれた。 《白いキズナに関するメモ》  1.想い合う相手に近づいたら出現する。  2.糸で繋がれている間、相手に自分の姿(霊体)は見えるようになるけれど、自分は天使が見えなくなる。  3.糸が切れる要因は、二つある。魂の離れた体の、心臓が止まった時(死んだ時)と、一度体から離れた魂が、まだ生きている体に近づいた時。  4.糸で繋がれた相手と無理に離れようとすると、糸は縮んで固くなる。が、帰ってくるつもりで距離を空けると、糸はゴムのように緩んで伸びてくれる。  5.糸が切れたら、互いに関わった記憶も消えてしまう。 「こんなところかな」と言い、沙織さんが私に目を向けた。
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