21人が本棚に入れています
本棚に追加
「そう。とにかく、四日後にはネームを完成させなきゃなんだけど。そもそも連載会議に出せるかどうかは、担当だけじゃなく、編集長にもオッケーをもらわなきゃいけない。ベテラン作家って贔屓は多少あるかもしれないけど、それは読者アンケートやネットでの評価が良かった場合。つまり。今私は崖っぷちなの」
『っえ、羽野先生が??』
「担当からはジャンル変更をして、ファンタジーを描けって言われてる」
恋愛漫画家の大御所である羽野詩織先生が、ファンタジー?
驚きから、私はなにも言えずに口をぽっかりとあけた。嘘みたいなジャンル変更だが、それはそれで読みたい、と思う。羽野先生が描けば、きっと面白いストーリーができあがりそうだ。
「デビューしてから何年も漫画家やってるけど。私、ファンタジーは描いたことがなくて、正直言ってサッパリなの。けど、今私たちに起こってる現象ってファンタジー以外の何物でもないと思うんだよね」
『そう、ですね』
「だから。私と離れられずに、もし、この状態が続くって言うなら。朝まででいいから、ミハルちゃんに協力してもらいたいの」
『協力? 私が?』
強い眼差しで頷く沙織さんと、正面から目が合う。
最初のコメントを投稿しよう!