21人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は胸の前で両手をグウにした。強い眼差しとその情熱に圧倒される。試しに尋ねてみる。
「どんなストーリーを描いていたか……思い出せる?」
『えぇと。三作目、なんですけど。男の子に媚びていると誤解されがちな主人公が、友達を作って、好きな人と結ばれる話を描きました』
ミハルちゃんが思い出せる範囲で、ストーリーの流れを詳細に聞き出し、起承転結のまとまりを考えた。
「実際、原稿を見ていないから絵柄とかコマ割り、トーンの使い方なんかは判断できないけど。私が思うには、主人公が受け身でこれといった、目を引く行動をしていないんじゃないかな? 周りが歩み寄ってくれてお終いだと、残念だなって印象を受けるし」
『な、なるほど……!』
彼女はジェスチャーをするように、手をぷるぷると動かしながら、メモできない現実を悔やんでいた。
『羽野先生の言うとおり、確かに受け身でした。主人公に行動させるというのは、読んでてびっくりするような行動、とかですか?』
「そうだね。読者が思いも寄らないことをされると、気になってページをめくっちゃうし」
ミハルちゃんは両手を頬に当てて、うわぁ、と感慨深く声に出した。『感激です、嬉しいです』と喜ぶ姿を見ていると、可愛らしいなと思い、ついほっこりしてしまう。
「ミハルちゃんはさ、どんなお話が好き?」
最初のコメントを投稿しよう!