牧野 沙織 2

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 どんな、と呟きながら、彼女の目線が宙に上がる。 「漫画では、恋愛とか友情、青春なんかをいつも描いてるの?」とさらに質問を重ねる。そうですねぇ、と呟き、彼女が思いつくことを喋った。 『自分が描くとしたら、ドキドキするような胸キュンストーリーがいいんですけど。読むとしたら、わくわくするお話がいいです』 「わくわくする話……たとえば、和倉先生が描くような?」 『はい。それもあるんですけど、不思議な物語とか、好きです。なにが起こるかわからないのでわくわくします』  不思議な話か、と独りごち、いわゆるファンタジーだよなぁと頭の中でイコールを結ぶ。 『こんなことが実際に起きたら素敵だなーって思うようなこと。たとえば願いが叶うとか、大切な誰かを救うとか。夢があって素敵だなって思います』 「確かに。願いを叶えるために無理難題なんかを突きつけられたりしたら、先が気になるしね」  やはりファンタジーだ。願いを叶える、と走り書きでメモをする。 「願いを叶えると言っても、多種多様だよね。恋愛成就や友達との仲直りも願いのひとつだと思うし」 『それもそうですけど、もっとシンプルな願いごともありですよ。今流れ星が流れたら。私だったら、漫画家になれますように、って願うし』 「流れ星かぁ。けどあれって、流れる一瞬で三回唱えなきゃ駄目なんだよね」
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