牧野 沙織 2

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 そう、と続け、私は唇を引っ張り口角を上げる。 「都市伝説的に噂されてる世界設定で、年に一度しか試せないけど……デジタル時計なんかの数字の羅列を見て願うなら。願いごとを唱える時間は六十秒あるし、流れ星よりかは確実に願えそうかなって」  言いながら、私はパソコンのワードを立ち上げ、設定内容を打ち込んでいく。 『確かに。誕生日にエンジェル数字を見て願いを叶えるのは、夢があってわくわくしますね! ……でも。それだとちょっと簡単そうな感じがするかも、です』 「……簡単?」 『はい。都市伝説として知られているなら。子供や学生、大人でも。半信半疑に試す人は試すだろうし。本当に叶うならSNSなんかで話題になりそう……。そうなったら都市伝説じゃなくて、信憑性のあるおまじないになりますよね?』  なるほど。確かにそうだ。三百六十五日、毎日誰かの誕生日はやってくる。数字を見て願うだけなら簡単すぎるし、叶った実感が残るなら世間に広く認知されるはずだ。  だとしたら、何か条件を加えるとか、記憶自体が消えるとか。そういう設定にしなければいけない。条件。たとえば、なんだろう……?  眉をしかめたまま首を捻るが。なかなかアイディアは降りてこない。 『あっ! 叶うのが永遠じゃなくて、一時的だとしたら。私なら試さないかもしれません』 「ん、一時的? どういうこと?」
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