2日目

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 二人掛けのテーブル席に荷物を置き、「座って待っててね?」と小声で囁かれる。花純さんが離れると、やはりある程度の距離で引っ張られた。  あれ? でも……。  昨夜(ゆうべ)よりかはその距離が伸びている。白い糸という名のリードが伸ばされたことに、また不思議を感じた。 「お待たせ」  トレーに朝食を載せた花純さんが席に戻って来て、ようやく椅子に座った。朝食はパンやスープ、サラダがセットになった洋食だった。  何か話をしたいけれど、花純さんはとにかく食べることと観察することに夢中だった。  手と口を動かし、キョロキョロと周囲を確認している。時折なにかを考え、ウンウンと頷き、口角を上げる。僕は黙ってそんな彼女を見つめていた。  やっぱり変な人だ。見た目の可愛さを裏切る変人だ。 「ごめんね、私だけ食べちゃって」  エレベーターの上ボタンを押し、花純さんがヘラッと笑う。僕は『いえ』と答えた。 『花純さんが大食らいなのはよく分かりましたから』  彼女は無料券の分を食べ終えたあと、「足りないな」と呟き、おにぎりを買って食べていた。しかも二個も。 「ゴウくん知らないの? 朝はしっかり食べなきゃダメなのよ?」
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