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顔に色を付けるのが不思議で、つい食い入るように見ていると、彼女は困ったように笑った。
「見られるとやりにくいなぁ」
そう言いながら、不思議な器具でまつげを挟んで持ち上げている。
化粧をしない彼女も可愛いけれど、した後の彼女は、綺麗な包みでラッピングをした花のようだった。食べ物で例えるなら、フルーツを盛られたデコレーションケーキだ。
何気なくそう呟くと、花純さんはハッと目を見開き、「いい感性してるわね?」と言って食いつかれた。
「ゴウくんってロマンチストなのね?」
そうも言っていた。ロマンチスト? 自分のことはよく分からなくて首を傾げた。
途中、テレビの音楽が引き締まったものに変わり、花純さんの興味がそちらに移った。
花純さんが真剣な顔つきで観ているのはニュース番組だ。人々が再審開始と声を上げ、裁判のやり直しが決定したことを報じていた。
およそ半世紀前に起こった事件で、裁判で無罪を訴えたにもかかわらず、死刑判決が確定し、裁判のやり直しが認められるまでに、四十数年もの時間を有したのだとキャスターは語っている。
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