2日目

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 花純さんは黄色やオレンジの縦縞が入った大きめのトートバッグから、分厚い紙の束を取り出した。それを広げて僕に披露してくれる。あ、とポッカリ口が開いた。 『漫画、ですか?』  花純さんが出したのはいわゆる漫画の原稿用紙だった。 「そそ。少女漫画。私、漫画家になるのが夢なの」  言いながら彼女はニヘラッと笑う。少女漫画と言うからに、恋愛がベースとなる物語を描いているらしい。 『すごいですね……』  専門的なことは分からないが、絵はかなり上手いと思った。一ページを五、六個の絵に分けて、繊細な線で男女を描いている。黒いインクだけで描かれたページと、グレーのシールみたいなやつが貼られたページがあった。 「コレはスクリーントーンって言って、トーンが貼ってあるのはほぼ完成でね? ペン入れしただけのページと下書きだけのページと、まだまちまちなのよ。カラス(ぐち)も途中だし、もっと頑張らなきゃねぇ〜」  花純さんは専門用語を並べてため息をつく。 『カラス口ってなんですか?』 「コマ割りするペンのこと。インクを付けて描く万年筆みたいなものよ? ミリペンでコマ割りする子もいるけど、私は断然カラス口が好きなの。線の太さが変えられるし、アイシーインクの黒が綺麗に出るからね」 『……へぇ』
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