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すると彼の死亡者リストが青い炎を上げて燃え上がる。その情景を見つめ、脳裡に浮かんだある名前を口にしていた。
《……ヒョウタさん。そうだ、ヒョウタさんだ》
私の魂が悪霊化するのを防ぎ、無事、天界へと送ってくれた“あの人”だ。
私は羽を翻し、ポケットからリストを取り出した。
*
後になって知ったことだが、寛人くんを助けるために放置した一枚目のリスト名簿者は、先輩天使が無事に病院内で保護し、ちゃんと自分のリストを持って天界に送り届けることができた。多少、時間の誤差が生じたけれど、浮遊霊になることもなく大事には至らずに済んだ。
とはいえ、自らの私情で、他の魂を危険に晒したのだから、始末書問題から逃れることは出来ず、直々に神様の元へと召集された。私は充分に反省し、今後ともよろしくお願いします、と神様に頭を下げた。
【今回、リストが見えたあの少年だが】
珍しく神様から声がかかるので、《はい》と背筋を伸ばして真面目に聞いた。
【死期が近い人間には、ああしてリストが光って見える】
《そ、そうなんですか。それじゃあ、二度目に会ったとき、私の姿が見えなくなっていたのは、どうしてですか?》
不思議に思えて仕方ない疑問をぶつけると、神様は沈黙し、【運命は避けられないからだ】と低く沈んだ声を出した。
運命は避けられない。
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