2日目

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 花純さんは、五円玉とマッチと洞穴をチョイスしてファンタジーな物語を作っていた。  普段は恋愛ものばかりを妄想しているらしいが、別のジャンルを考えることも出来るようだ。さすがに漫画家を目指すだけのことはある。  花純さんは日頃から色々なことに興味を持ち、至るところにアンテナを張り巡らせている。気になる言葉が有れば、手持ちの電子辞書で調べるクセまである。通称「ハヤトくん」だ。  今どき電子辞書にまで名前をつける女子なんて見たことがない。変人だけど、それでも見ていて飽きない魅力が彼女にはあった。  * 「うぅ〜ん……。こうして見ると、交通事故ってそこら中で起こってるのねぇ」  花純さんは黒とピンクのマウスをカチカチとクリックしながら、ため息をついた。 「でも。日付けは多分……昨日の、五月二十七日よねぇ?」  僕に確かめるように聞くのだが、やはり僕は首を傾げる。正直、いつ死んだのかは覚えていない。  交通事故も、一瞬の記憶しか無くて、一体どこへ行こうとしていたのか全く分からない。 「……あっ!」  不意に花純さんが目を瞬き、ディスプレイを指差した。 「もしかして、コレかな?」 『え……』
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