3、4日目

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3、4日目

 ◇ 僕は誰なんだ?  気付いたら「ゴウくん」と呼ばれていた。ああ、オレのことか、と思い、隣りに立つ花純さんを見上げる。 「退屈させてごめんね?」  コソッと囁かれ、彼女は横顔のまま眉を下げて笑った。ううん、と首を振る。  金曜日。僕は彼女のアルバイトで、とある花屋に来ていた。駅から近い場所に位置していて、店先の舗道はそこそこに人通りもある。  花純さんの仕事は午後四時から午後七時までの三時間で、水曜日と金曜日のみシフトが割り当てられている。  夕方から夜にかけての時間帯だと、お客さんの年齢層は主婦や小学生が大半をしめ、ときどき仕事帰りのサラリーマンも来るようだ。それ故に、男子高校生という来客は(まれ)だと花純さんは言った。 「金曜日(きょう)はどっちにしても来ないんだけどねぇ……」  まえに聞いた“赤いバラの王子さま”を想い、花純さんは花鋏(はなばさみ)でバラの茎をカットしていた。水曜日限定で一輪のバラを買う高校生のことだ。  チョキンチョキンと切り花の茎を切り落とし、彼女は水揚げという作業をしている。  どうして売り物の花を切る必要があるのか気になって聞いてみると、花の鮮度を保つためだと彼女は言った。  花は生き物で、雑に扱うとすぐに鮮度が落ちてしまうので、茎を切りなおしたり、切り口に熱を加えたりして様々な水揚げ作業が必要となるらしい。
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