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夕食はドン引きだった。棚から出したカップ麺に湯を注いでかき込み、既に冷凍しておいた白米を電子レンジでチンする。それをカップ麺のスープに入れて食べていた。
炭水化物に炭水化物の合わせ技で、野菜は皆無。インスタントにする事で料理は割愛。食事はただ空腹を満たすためだけの行為に思えた。
花屋で見た店員は幻で、もはやどこにもいない。彼女は前髪が邪魔なのか、カラーゴムでくくり、瞳をギラギラさせている。
うん。やっぱり変人だ。奇人変人。
つけペンというやつを黒いインクに何度も付けて、ガリガリと線を描いている。ノリノリで歌まで歌っている。一瞬、危ないクスリでもやってんのか? と心配になったほどだ。
あまりにも楽しそうに作業をするものだから、一体どんな恋愛話を描いているのだろうと思い、尋ねた。
「この二人はね。すでに赤い糸で繋がってるから、どうやっても結ばれる運命なのよ?」
ハイハイ。
うふふ、と笑い、悦に入る彼女の頭は、きっと年から年中ピンク色で、お花畑が広がっているに違いない。
なんというか。本当におめでたい人だ。呆れて嘆息しながら、それでも、と不思議に思う。
僕は何でこんな変人を可愛いと思ってしまうんだろう。
*
翌日。またしても布団で寝そびれた彼女は、床からのっそりと起き出し、「うぅ〜ん」と伸びをした。
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