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冷蔵庫から栄養ドリンクを取り出し、オヤジさながらに腰に手を当て、一気飲みをする。
「元気ハツラツ!」
うん、分かったから。
花純さんのこの変なテンションにも、もう慣れた。僕は生暖かい目で彼女の挙動を見守った。
あれ?
そこでふと眉をひそめる。普段の生活で疲れが溜まっているのか、花純さんの顔色がなんとなく良くない。彼女はこめかみあたりに指を添えて、ため息を吐き出していた。
栄養ドリンクを飲んでのあの挙動はやせ我慢、かもしれない。不意に後ろ暗い気持ちになり、不安が広がった。
とは言え、普段からあれだけ漫画を描いているんだから、少々の体調不良は当たり前なのかもしれない。作業が順調なときは、そのまま雑魚寝することもあるのだから。
僕は自分自身にそう言い訳し、彼女の体調について見て見ぬふりをした。
昨日同様に、バッチリと化粧を施し、彼女は元気そうに振る舞っていた。
今日は土曜日。市立病院に行こう、と約束をした日だ。花純さんに付いて外出し、バイト先の花屋で彼女は形ばかりの花束を買ってから病院へと向かった。
院内へ入り、真っ先に受付へ向かう彼女を見て、僅かながら緊張が走る。
一体なんて言うつもりなのだろう?
僕は花純さんのすぐそばで事の成り行きを見守った。花純さんは臆さずに、受付の女性へ「すみません」と声をかけた。
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