3、4日目

7/14

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
 俯きながらぽつぽつと呟き、花純さんはグス、と鼻をすすった。おそらく、彼女は皇さんに同情を寄せて泣いている。  けれど、ここまで来て行かないという選択をしては意味がない。そう思うのだが、僕一人であの病室までたどり着けるだろうか? 花純さんと繋がれたあの白い糸に阻まれたりはしないだろうか?  心配と不安はあったけれど、僕は落ち込む彼女を見て、優しく言った。 『それじゃあ、オレ一人で行ってくるね?』  彼女はハッとして顔を上げた。花純さんが悲しみに暮れているのが分かったから、僕はありがとうの意味も込めて微笑むのだが。僕を見つめるその瞳に、不覚にもドキッとさせられる。  外では滅多に目が合わないのだ。潤んだ瞳を見て、少なからず動揺した。 「駿くんだと……。いいね?」  花純さんは一筋の涙をこぼし、小さく微笑んだ。  再び病室前まで歩き、扉と対面する。今現在、背中から白い糸は出現したものの、リードは伸びる一方で限界には達していない。  長さはかなりのものになっているはずだが、糸の仕組みはやはり分からない。  405号室は個室で、(すめらぎ) 静子(しずこ)と書いたネームプレートがはめ込まれていた。  皇、静子さん。この人が僕のお母さんだとしたら、絶対に全てを思い出す。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加