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そうしたら成仏という流れになるのかもしれないけど、僕は無事に花純さんから離れられる。これ以上、迷惑をかけることもなくなる。
フワフワと浮き上がる足下を見つめ、複雑な気持ちになった。
花純さんに憑いていたのはたった三日間だけど、彼女が今この場に居ないのをひどく寂しく感じた。
もうあの奇人変人ぶりを見れないのも、ちょっとだけ名残惜しい。
『………』
ほんのちょっとだけ……、だけど。
僕は意を決して、目の前の扉をすり抜けた。静かな個室には憂鬱な空気が充満していた。
右手前方に置かれた白いベッドに、その人の横顔が見えた。
起こしたリクライニングに体をもたれさせ、すぐ横の、窓から見える景色をただぼんやりと見ている。
黒く長い髪を一つに結い、死んだ魚のような濁った瞳で虚空を見つめている。
この人が……お母さん?
分からなくて、一歩二歩と足を出した。今のところ記憶には何の変化も見られない。
オレは。本当にこの人の子供なのか?
彼女に近付くと、不意に青白い光の粒が目に入った。
さっきまではベッドや彼女が死角になっていて気付かなかったが、静子さんのそばに小さな男の子が座っていた。
ここへ来るまでの間に、エレベーターで見かけたあのおじさんのように、青白い光の粒を身に纏い、覇気のない瞳で僕を見ていた。
おじさん同様に、死んだ人だ。死んだ少年。
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