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『……だれ?』
少年は怪訝に眉を寄せ、少し不愉快そうにむくれた。誰、と問われても答える術がない。僕は曖昧に首を傾げた。
『ぼくのお母さんに、なんの用?』
……あ。
そのひと言で少年が誰かを察するが、少年は変わらずに僕を睨んでいた。
『ごめん。オレはただ……自分を探していて』
キミのお母さんに用があるわけじゃないというニュアンスで答えると、少年は少なからずホッとし、次いで首を傾げた。
この少年は、先日亡くなった皇 駿くんだ。本人がここにいるということは、僕は全くの別人。従って静子さんも赤の他人で、お母さんじゃない。
『自分をさがしてるってどういうこと?』
駿くんはあどけない表情で瞳をぱちぱちさせた。さっきまでの敵意は微塵も感じない。
『オレ、さ。自分がどこの誰だか分からなくて。記憶と一緒に成仏の方法も探してるんだ』
僕は友好的な態度に心がけ、駿くんに近付いた。
駿くんは丸椅子から立ち上がり、ベッドにいる母親に『お母さんまってて』と優しく語りかける。そして僕の元まで歩み寄った。
『あのね……。なんかよく、分かんない』
『あ……』
そうか、言っている意味が伝わっていないんだ。
僕は駿くんに事のいきさつを話した。気付いたら死んでいたということ。知らないお姉さんと一緒にいて、今現在、自分が誰であるのかや、成仏の方法を探していると分かりやすく説明した。
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