21人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
事の意外性に僕は頓狂な声をあげていた。
『うん。ぼくが死んだとき、一度おむかえに来たの』
『そ、そうなんだ?』
天使って。本当にいるんだな……?
天国とか天使というのは、人間の妄想が生み出した、ただの作り話だと思っていた。そしてその天使が、駿くんを迎えに来た……?
駿くんがまだ話したそうなので、黙って聞くことにする。
『そのお兄さんが言ってたんだけどさ? 糸をむりやり引きちぎろうとしたり、相手とサヨナラしようとしたら、それはちぢんで固くなるんだって』
駿くんは先程言った、“想いの糸”の話をしてくれた。
『縮んで固くなるって、鎖みたいに引っ張られるってこと?』
『うん、多分』
『それじゃあ、糸の相手と一緒にいようと思っていたら……この糸はどこまでも伸びるの?』
『……うーん? そこまでは分からないよ』
『そっか』
駿くんから聞いた“想いの糸”の話を思い返し、続けて尋ねた。
『その“想いの糸”なんだけどさ、キミはどういう状況で糸が切れたの?』
どういう、と呟き、駿くんは眉根を寄せる。
『分かんないけど……気付いたら切れてて。そのあと天使のお兄さんがパァッてあらわれたの。すごいんだよ?? まっしろのおっきな羽でキラキラしてるの!』
『……へぇ』
駿くんにとっては、その天使とやらが印象的で、よほど感銘を受けたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!