天使のささやき

３、４日目

『それでね？　糸のはなしをしてくれたの。お母さんとぼくがね、おたがいにつよく想ってたから、つながったって』

　お互いに強く想っていたから……？

　途端に目の覚める思いがした。ということは、生前の僕は花純さんを知っていて、花純さんも僕を知っていたということになる。

　互いに強く想い合うほど、それこそ親子の絆ほどの強い想いで、僕と彼女は繋がっていたということになる。

　だけどそれには矛盾が生じる。当然、僕は彼女を知らないし、彼女も僕が誰であるかを分かっていない。

　僕の場合は単に記憶が飛んだだけかもしれないが、彼女は本当に僕を知らないふうだった。

『キミは。どのぐらいの時間、お母さんと繋がっていたの？』

　うーん、と天井を仰ぎ、駿くんは言った。『多分、一分ぐらいじゃないかな？』と。

　そのあと駿くんにお礼を言って戸口に向かうと、彼は『また天国であおうね！』と笑顔で手を振っていた。

　“想いの糸”や花純さんとの関係については未だに謎ばかりだが、駿くんと話をして大きな収穫はあった。

　彼の言う、天使のお兄さんとやらが迎えに来てくれたら、僕も成仏できるかもしれないのだ。更にはその天使が現れる前に、白い糸も切れるかもしれない。

　全ては推測にすぎないけれど、それまでは糸にしたがって花純さんのそばにいようと思った。