21人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
自分が誰であるのか分からなくても、きっと時が満ちたら迎えが来てくれる、そう信じてーー。
もと来た廊下を戻り、談話室で待つ彼女に、駿くん本人に会ったことを話した。
僕と同じ幽霊でありながらも、ちゃんと本人がいたのだと伝えると、花純さんは残念そうに肩を落としていた。
単純に僕を成仏させられないことに嘆いているのかと思いきや、彼女は彼女なりに僕を心配し、僕が天国へ行けなくなったら可哀想だと思っているようだった。
なので、駿くんから聞いた成仏の手順を彼女に説明した。天使のお兄さんが迎えに来るらしいと伝えると、花純さんは瞳をキラキラと輝かせた。
「天使って……、やっぱり本当にいるのね?」
そう言ったきり、どこかあさっての方向を向いてにやにやするので、僕は呆れて嘆息する。
この人……。またどっかにトリップしてるな? まぁ、それが花純さんらしいっちゃ、らしいけど。
駿くんから聞いた情報のうち、天使や成仏のことは話したけれど、“想いの糸”については口を閉ざした。
今現在も、ある程度の距離が開くと白い糸は出現するし、単純にきみ悪がられると思ったからだ。
今、彼女に畏怖され、拒絶されたら、僕の心はきっと奈落の底に沈むだろう。
僕は花純さんに……嫌われたくない。
「それじゃあ、ゴウくん。その天使さんが迎えに来るまでは私といようね」
最初のコメントを投稿しよう!