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花純さんの笑顔と優しさが心地いい。彼女に迷惑をかけたくないと思う一方で、僕は彼女とサヨナラしたくないんだ。
できることならずっと一緒にいたい。こんなの、矛盾してる。
このときの僕は、彼女と共に居れることにただただ幸せを感じていた。やがては訪れる、名付けようのない辛さが増すことなど考える余地もなく。
結局のところ、花純さんが持参した見舞い用の花束は、病室の前に置いて帰ることにした。
病院を去るとき。自販機コーナーに若い男女が数名いるのを見かけて、花純さんが足を止める。振り返り、その中の一人をジッと見ているのに気が付き、僕は『どうしたの?』と尋ねた。
「ちょっと。知っている子のような気がして」
どこか躊躇いを含んだ仕草に、僕は首を傾げる。
『声、かけてきますか?』
花純さんはそこから視線を外し、ううん、と首を振った。
「別に知り合いってわけじゃないから」
何となく気になって、僕は花純さんが見ていた高校生ぐらいの若い男をジッと凝視する。
「行こ、ゴウくん」
そのまま出入り口に向かう彼女に倣い、僕も浮遊する足で帰路を辿った。
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