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5日目以降
◇ 当然ながらさわれない。
気付いたら、僕は花純さんに恋心を抱いていた。
彼女と共にいようと決めてから数日が経ち、出会ったあの夜から今日でちょうど一週間が過ぎていた。
水曜日。花純さんは学校帰りにバイト先の花屋へ寄り、現在仕事に勤しんでいる。
ちなみに表情は暗い。接客の時こそ、明るく笑顔を振りまいているが、お客さんがはけると途端に悲しそうな顔をし、重いため息を吐き出していた。
原因は分かる。ここのところ頻繁に起こる頭痛や肩凝りで体調は思わしくないうえ、水曜日限定の“赤いバラの王子さま”が現れないからだ。先週に引き続き、今日も来なかったらしい。
すっかり意気消沈した彼女は、帰りにスーパーに寄り、大量のお惣菜を買い込んで帰宅した。
先週はやけ酒にしたから、今週はやけ食いをするつもりなのだろう。好きな人のこととなると、極端に情緒不安定になる彼女が少しだけ心配になる。
「運命って残酷ね」などとボヤき、机いっぱいにお総菜のケースを並べる。
「きっと王子さまは、毎週バラを贈っていた彼女と……結ばれたんだわ」
花純さんはそうと決まったわけでもない事象にも意味を見出し、ストーリーを組み立てていた。
「ただ指をくわえて見ていることしかできなかった私は……。しょせんは脇役だったって話よね」
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