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冷蔵庫から出したオレンジジュースをコップに注ぎ入れ、僕の前に置いてくれる。当然、飲めないのを彼女は知っている。
僕の視線に気付き、花純さんは「ごめんね」と力なく笑った。
「私の失恋記念日。付き合って?」
そう言って僕のコップにカチンとコップを合わせる。
『でも、まだ。そうと決まったわけじゃないですよ?』
何の根拠もないのだが、彼女に少しでも笑って欲しくて無責任な言葉をかけてしまう。花純さんは眉を垂れて微笑んだ。
「ありがとう、ゴウくん。私のこと、慰めてくれてるのね。優しいね?」
『……いや』
僕は彼女から目を逸らし、先ほどいれてくれたオレンジジュースを見つめた。物体や物質には触れないので、味わうことはできないけれど。瑞々しい柑橘系の香りに触れて、幾らか懐かしい気持ちになる。
香りだけでオレンジジュースを楽しみながら、僕は花純さんをチラチラと盗み見る。彼女は幽霊を題材にした恋愛映画を見ながら、お総菜に箸をつけていた。
恋愛で傷付いたせいか、彼女の食欲は人並みで、ガツガツとがっついて食べることはなかった。
ただぼうっとテレビを見つめながら、思い出す程度に箸を動かしている。そんな彼女を見つめ、胸の奥がズキズキと傷む気配がした。
心臓のあった所がキュウッと締め付けられるみたいで、眉間をしかめる。
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