5日目以降

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「ごめんなさい、大丈夫です。ちょっと、疲れが溜まっているだけなので」  ご迷惑をおかけしました、と一礼し、花純さんが彼から距離を取った。  もはや誤魔化しようもない。そう思い、胸がざわざわと波立った。彼女の体調不良は疲れが原因なんかじゃない。彼女は僕と共同生活を始めてから徐々に体調を悪化させている。  幽霊という不自然なかたちで存在する僕が憑いているせいで、霊障が起こっているとしか思えなかった。  男子高校生が「あの」と遠慮がちに声をかけた。 「お姉さん。この間、病院に来てましたよね?」 「……え?」 「そこの市立病院なんですけど」  花純さんは思い当たる節を見つけて、「ああ」と頷いた。 「行きました。確か……先週の土曜日、だったかしら?」  言いながら、意味深に僕をチラ見する。彼女は皇 駿くんの件で行った土曜日のことを僕に確認していた。僕はひとつ、大きく頷いた。 「やっぱりそうか。ちょうど俺らも見舞いで行ってて……飲み物を買ってるとき、お姉さんを見かけた気がしたので」  あのときか、と不意に思い出した。あの日、病院を出る間際に、花純さんは若い男女数名を見て、振り返っていた。その中の一人、まさしく今そこにいる男子を花純さんは見ていたのだ。  僕が見えない彼は、花純さんが一人きりで歩いているのを見て、記憶に留めたのかもしれない。
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