5日目以降

7/9

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
 男子高校生は「今ちょっといいですか?」と花純さんに話しかけた。プライベートな話をするつもりだと瞬時に察知する。  それまでは店員とお客さんの立場で話していたのだが、彼らの距離が急に近くなった気がして、少なからずムッとなる。 「少しだけなら。大丈夫です」  花純さんは若干、こめかみのあたりを押さえながら彼を見た。頭痛があるのか、辛そうだ。  男子高校生は意を決した様子で、口を開いた。 「俺、開聖高校に通う篠原(しのはら)っていうんですけど」 「はい」 「毎週水曜日に、ここで一輪のバラを買ってたやつ、覚えてますか?」  瞬間、花純さんがビクッと肩を震わせた。 「お、覚えてます。彼のお友達の、あなたのことも、知ってます」  篠原と名乗る高校生は意外そうに目を丸くした。 「彼、ここのところ見ないですよね。彼がどうかしたんですか?」  問いただす彼女の声は、不自然に震えていた。 「そいつ、俺の親友でレンって言うんですけど。先週の水曜日……実は事故に遭って。今も意識が戻らないんです」  たちまち花純さんの表情が暗くなった。え、と呟くと同時に、丸い瞳を滲ませて頬に一筋の涙をこぼしている。  篠原をはじめ、高校生一同が花純さんの反応に息をのんだ。 「お姉さん。近いうちにレンの見舞いに行って貰えませんか?」  ……え。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加