5日目以降

9/9

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/169ページ
 彼らの後ろ姿を見つめ、花純さんは今し方貰ったメモを大事そうに握りしめていた。  僕はそんな彼女を見て、ただただ存在しないはずの胸を痛めた。きっと、気持ちの上では泣いていたはずだ。  この日が僕の、”失恋記念日“だったから。 「私、明日行くね?」  部屋の扉を閉めてすぐ、花純さんは静かに僕に語りかけた。 「明日学校だけど。彼が心配だから、休んでお見舞いに行く。ゴウくんも来てくれる?」  僕は少しの間をおき、こくりと頷いた。彼女と糸で繋がれている僕に、もはや拒否権はない。彼女と共に、行くしかないのだ。 「ありがとう」と言って、花純さんはまた泣いた。未だに意識の戻らない王子様を想い、さめざめと泣いていた。  その夜、疲れや心労を理由に、彼女は早々と床に就いた。すでに食べる元気もなく、ふらふらとベッドへ歩き、横になっていた。  僕は馬鹿だ。辛そうな花純さんを見て、ようやく決心がついた。このままずっとそばにいるなんて、悠長なことは言っていられない。  見て見ぬふりでこのまま放置すれば、彼女はいずれ何かしらの病魔に侵されるかもしれない。  花純さんがすっかり寝入っているのを確認し、僕はふわりと宙を蹴った。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加