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彼らの後ろ姿を見つめ、花純さんは今し方貰ったメモを大事そうに握りしめていた。
僕はそんな彼女を見て、ただただ存在しないはずの胸を痛めた。きっと、気持ちの上では泣いていたはずだ。
この日が僕の、”失恋記念日“だったから。
「私、明日行くね?」
部屋の扉を閉めてすぐ、花純さんは静かに僕に語りかけた。
「明日学校だけど。彼が心配だから、休んでお見舞いに行く。ゴウくんも来てくれる?」
僕は少しの間をおき、こくりと頷いた。彼女と糸で繋がれている僕に、もはや拒否権はない。彼女と共に、行くしかないのだ。
「ありがとう」と言って、花純さんはまた泣いた。未だに意識の戻らない王子様を想い、さめざめと泣いていた。
その夜、疲れや心労を理由に、彼女は早々と床に就いた。すでに食べる元気もなく、ふらふらとベッドへ歩き、横になっていた。
僕は馬鹿だ。辛そうな花純さんを見て、ようやく決心がついた。このままずっとそばにいるなんて、悠長なことは言っていられない。
見て見ぬふりでこのまま放置すれば、彼女はいずれ何かしらの病魔に侵されるかもしれない。
花純さんがすっかり寝入っているのを確認し、僕はふわりと宙を蹴った。
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