最終日

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 突然、蓮の目が開いた。おもむろにといった速さでは無く、急にパチっと目を見開き、瞳は僕をまんまと捉えていた。  え……っ!  僕は動揺し、後ろに数歩あとずさる。体の奥から今までにない熱が発生する。  僕はぎゅっと目をつぶったまま頭を振り、今一度蓮を見つめ直した。  彼は入って来たときと同様に、長い睫毛を伏せて眠っていた。プラスチック製の大きなマスクを付け、微動だにしない。  今のは、気のせい?  あとずさった足を出そうとして、奇妙な変化に気が付いた。  あれ??  さっきより、というよりも、今までより格段に視野が高い。僕はベッドの彼を静かに見下ろしていた。  不意にゾクッと肌が(あわ)だった。いや、霊体なので粟だつというのは(いささ)か間違っているのかもしれないが。背筋に氷を当てられたみたいにヒヤッとした。  なんだろう、この感じ。  病室(ここ)には、僕と彼しかいないはずなのに。  何故か、もう一人。  がいるような気配がした。  肉体があったなら、背中にツツ、と汗が滲んだに違いない。  僕は思い切って気配のする方向、右手後方へ振り返った。その姿を見て、目を丸くし、あんぐりと口をあける。 《お帰り? 蓮くん》
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