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僕は呆気に取られた。お姉さんはあろうことか瞳を潤ませ、急にシクシクと泣き始めた。
なんて言うか、感情表現の激しい人だ。可哀想に、と同情されているのは構わないが、とりあえずここにずっと立っている状況をどうにかして欲しい。
このままだとこの部屋の戸口に足が埋まって地縛霊にすらなりかねない。
泣いたままのお姉さんを暫く見守り、僕はため息をついた。泣き止んだ彼女はテーブルに置いたティッシュで鼻をかんでいる。
「泣いちゃってごめんね? て言うか、現実問題。私幽霊って見たの初めてなの。霊感とかそういうのは自分でも全くないと思ってたし」
『……はぁ』
「ホラーとかオカルト的な番組はどっちかと言うと好きなんだけどね、肝試しで実際にお墓とか廃墟とかに行くのは断固として反対なの。今日だって特別変わったことはしてないし。だからキミが……何で私の部屋にいるのか分からないの。この部屋だって、別に事故物件とかそんなんじゃないのよ? 部屋を借りる時にちゃんとネットで調べたし、不動産屋さんにも再三確認したし。もうね、幽霊が出る意味すら分からないの」
お姉さんは一息に言って、ハァと肩で息をしていた。僕はやはり思ってしまう。よく喋る人だなぁ、と。
『……すみません』
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