21人が本棚に入れています
本棚に追加
/168ページ
「いや、違くて。この間の模試の結果見て歩いてたら、用紙が風で飛ばされて。それで焦って取りに走ったら」
「拾ってくれたわけだ? そのお姉さんが」
「まぁ、そうだな」
蓮が一目惚れねぇ〜、と呟く樹は始終にやにやしている。
「それでなに? ただ見てるだけ?」
「いや。先週の水曜日から赤いバラを一本ずつ買ってる」
「は? バラ?」
「そう、バラ」
樹が無言になるので、僕も口を閉ざした。
「え、毎日バラ買ってんの?」
「いや、毎日じゃなくて。毎週にしようと思って。一昨日も買った」
「え〜……っと。それ何か意味あんの?」
「少なくとも、インパクトはあるだろ? 高校生が毎週水曜日に赤いバラ一本って、なんかミステリアスじゃない?」
「ほうほう、言われてみればそうだな。でも、それには欠点が一つある」
「なんだよ?」
「バラって、恋愛的なイメージが強いだろ?」
「それは分かってる。だからバラ一本の花言葉にちなんで買ってるんだし」
「花言葉って」と呆れ顔で肩をすくめ、樹は嘆息する。バラ一本の花言葉である『一目惚れ』や『あなたしかいない』という意味を伝えても、反応は同じだった。
「そもそも花って誰かに贈るために買うものだろ。まぁ自分のために買う人もいるけど、多数派は贈答品だ」
「……そうだな」
最初のコメントを投稿しよう!