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「てことはだ? あのお姉さんは熱心に週一で買いに来る蓮を覚えてはくれるけど、他の誰か、つまり彼女なんかに贈ってるんだろうって勘違いするぞ?」
「……うっ」
僕はそこで言い淀んだ。確かにその可能性は否定できないし、僕自身も考えた。それでも、僕は週一の買い物を続けるつもりでいた。
「いいんだよ、それでも。ずっと欠かさず買い続けて……ここぞってときに告白するんだから」
「告白ねぇ」
樹はふぅんと呟き、あ、と何かを思い出したように口を開けた。
「ちなみに、買ったバラはどうしてんの?」
「それは母さんにあげてる。すごい喜んでたよ」
樹は声を上げて笑い、「そりゃ、そうだろうな」と続けた。
*
花屋で赤いバラを買い続けて、約二ヶ月が過ぎた。五月の大型連休の最終日。今日も水曜日だ。
勿論、学校は休みで無いのだが。僕は花屋に行くため、制服に着替えて家を出た。
毎週学校帰りに、バラを買い続けたせいか、今では母さんにもその意図がバレているらしく、先月の終わりに「蓮の好きな子ってどんな女の子?」と聞かれてしまった。
「毎回同じラッピングだし、お花屋さんの子よね?」
ズバリな質問に答えるのが恥ずかしく、僕は話をはぐらかした。「それはまた今度言うから」と言うと、母さんは嬉しそうにニヤニヤと笑っていた。
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