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お姉さんは少年の目線に合わせて屈み、うふふと幸せそうに笑っていた。少年は「バイバーイ」と言って、彼女に手を振っていた。小学一年生ぐらいの男の子だ。
彼女と少年のやり取りをぼうっと見ていて、ついつい非現実的なことを考えてしまう。
俺も、あんな小さな少年だったら……彼女と仲良くなれるかもしれないのに。
足元を見つめてため息を落とす。いつも恥ずかしくて、スムーズに会話できない自分を情けなく思っていた。
子供の無邪気さは武器だ。あの笑顔一つで大人は絆されてしまう。
俺だって子供だったらきっと……。
考えても仕方のない仮定に眉間をしかめ、一直線に花屋へ向かった。
「あ。いらっしゃいませ」
今、あ、って言われた。やっぱり覚えてくれてる?
「あの、バラを一本、ください」
至近距離で彼女を見るのが恥ずかしくて、僕はやはり目を逸らしてしまう。
「いつもの赤いバラですね? いいの探しますので、少々お待ち下さいね?」
「……あ、はい」
お姉さんは笑みを含んだ声で、バラの入った銀色の筒へと踵を返す。彼女が離れてからようやくその姿をまじまじと観察し、見惚れた。
今日も。相変わらずの可愛さだ。花を愛でる横顔なんて女神そのものだ。僕は彼女を見つめて、次第に心音が速くなるのを感じた。
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