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「こちらはどうでしょう?」
やがてお姉さんは数ある中の一本を探し出し、僕に見せてくれる。
毎週、このときのこの瞬間がたまらない。
正直、バラを見るのは一瞬で、この時だけは彼女の顔をちゃんと見ることができる。
「それで、お願いします」
彼女は頬を少しだけピンク色に染めて、「かしこまりました」と笑みを咲かせる。
やっぱり、可愛い。
レジまで進み、僕は彼女にお金を支払う。会計は数枚の小銭で済むのだが、いつも決まってお札を出すようにしている。
なぜなら、お釣りがあった方が彼女との時間を長く感じられるし、小銭の受け渡しをした方が、彼女に触れられるからだ。
ストーカーじみているかもしれないが、好きな人に触りたいと思うのは、ごく自然な感情だ。そしてこれが唯一の手段なのだ。
彼女は僕の手にお釣りを乗せて、それからレシートを渡してくれる。彼女の白い指を見つめて、指輪をはめていないのも既に確認済みだ。
彼氏なんていない、のが理想だけど。実際のところはどうなんだろう? もちろん、聞けるわけない。
一本のバラを丁寧にラッピングしてくれる彼女を待ってから、僕は商品を受け取った。
ペコッと会釈してから、踵を返す。
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