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お姉さんは混乱しているようなので、まずは自分のことを伝えようと思った。
『オレもよく分からないんです。分かってるのは、交通事故で死んだことと、気付いたらお姉さんの部屋にいたということぐらいで……実は自分がどこの誰かも覚えていません』
「……え」
お姉さんは、ピキッと表情を固めた。
「キミ、自分が誰か分からないの? 名前も?」
『はい。オレは……どこかに行く途中でした。横断歩道を走ってて、急に突っ込んできた車とぶつかって……。多分そのまま死んで、この部屋に立っていました』
お姉さんは後ろ手をついてそろりと体勢を変え、さっきまで座っていたであろうコタツテーブルを前に座り直した。そして僕を見て、おいで、と手招きしてくれる。
迷いはあったが、僕はふわふわと軽い足を出し、お姉さんのすぐそばに座った。
「幽霊って足がないものだと思ってたけど、実際はあるのね?」
お姉さんは今のこの状況に観念したように、ふふっと笑う。
「それに。結構はっきり見えてるし……さわれは……しないのよね?」
お姉さんが僕に手を伸ばし、肩の辺りをつつこうとするが、スルッとすり抜けるので彼女は諦めて手を引いた。
「……さて。どうしよっか?」
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