Re.1日目

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 そのとき、ガラガラと扉の開く音が聞こえ、ピクリと反応する。 「わざわざごめんなさいねぇ、こんな綺麗なお花までいただいて」 「いえ。綺麗に生けていただけて、嬉しいです」  僕の病室に女性が二人入って来て、一人が手にした花瓶を近くの棚に置いていた。 「蓮の意識が戻っていたら、良かったんだけどねぇ」  二人のうち、そう呟いたのは母さんだ。声を聞いた瞬間に分かった。  母さんが置いた花瓶には赤いバラが三本とピンク色のかすみ草が生けてある。  もう一人は、若くて可愛らしい女の人だった。ふんわりと巻かれた髪をサイドにまとめ、可憐な印象を受けた。  突如として、こめかみあたりがズキっと痛み、「う……っ、」と声を上げる。 「えっ!! 蓮!?」  僕の声に反応したのは母さんだ。僕は眉間を歪めたまま、手で頭を押さえた。 「う、うそっ! 蓮、目が覚めたの??」  母さんは涙声で焦っていた。 「大変っ、直ぐにお医者さんを呼ぶからね??」  僕の頭もとにある配線を引っ張り、母さんが丸いボタンを押す。ナースコールだと分かり、直ぐに看護師らしき人が応答する。母さんは動揺しつつも、僕の目が覚めたことを伝えていた。
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