Re.1日目

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 なんで、なんで、なんで??  僕は彼女を見たまま激しく狼狽した。母さんは僕の表情から気持ちを察したのか、「なるほどねぇ」とにこやかに言った。  程なくして、病室に医者と看護師が現れた。母さんにベッドのリクライニングを上げて貰い、僕は曖昧に座った状態で医者を見上げる。 「おや、顔が赤い……血色は良さそうだ」  医者は僕の顔を見て嬉しそうに笑った。多分、主治医だろう。  彼は僕のそばに立ったままで「主治医の(たき)といいます」と言って挨拶をする。 「自分のことが分かりますか? 名前と生年月日を教えてください」  僕はこくりと頷き、「市ヶ谷 蓮です」と淀みなく答えた。生年月日もちゃんと西暦で言えた。  主治医の瀧先生は、うん、と笑みを絶やさずに頷き、「大丈夫そうですね」と続けた。 「それじゃあ、蓮くん。二、三質問するけど。どうしてここにいるのか分かりますか?」  僕はパチパチと瞬きを繰り返し、視線を自分の手元に落とした。  目覚めてすぐは頭が働かなかったけれど、なぜ病院にいるのかは分かる。  事故に遭ったからだ。信号のある横断歩道を渡っていて、すぐそばに迫るトラックに撥ねられた。  事故直前の映像が頭に浮かぶ。俺は……、そう。花屋に行くところだった。
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