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僕がトラックに撥ねられたとき。運転手は慌ててブレーキペダルを踏み込み、トラックがある程度減速していたため、幸い脳にはそれほどのダメージがなかったらしい。
ところどころ打撲や骨折、挫創はあるものの、瀧先生からは軽い脳しんとうと判断され、意識が回復するのは時間の問題だと言われたそうだ。
しかしながら、待てど暮らせど、僕の意識が中々戻らないので、瀧先生をはじめ、家族や友人にはかなりの心配をかけてしまった。
「篠原くんたちも何度もお見舞いに来てくれてね、蓮のこと心配してたのよ?」
「……そっか」
「蓮が目覚めたこと。母さんから篠原くんに伝えておくわね?」
「うん」
ていうか。樹の連絡先、聞いてるんだな。
あの日。スマホを取りに戻った樹には、おそらくものすごいショックを与えただろう。また顔を見たら謝らないと。不注意でひかれたって。
母さんは鞄からスマホを取り出し、「ちょっと談話室で電話してくるわね?」と言った。
こじんまりと立ち尽くす彼女を見て、「悪いけど、少しの間。蓮をお願いするわね?」とも言っていて、僕を動揺させる。
不意にドキンドキンと心拍が早くなり、目の合った彼女を見て、うっかり俯いてしまった。
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