Re.1日目

8/15

21人が本棚に入れています
本棚に追加
/167ページ
「篠原くんから、九日も意識が戻らないって聞いてたから。私、蓮くんがそのままだったらどうしようって、すごく怖くなって……っ、でも。ちゃんと目覚めてくれて……いま、すごく嬉しいのっ」  え?  お姉さんは声を震わせて、しまいにはシクシクと泣き出してしまった。  うわ、どうしよ、これ。俺、なんて言えばいい?? 「な、泣いちゃってごめんなさい」  そう言って鞄からハンカチを取り出し、彼女は慌てて目頭を押さえている。 「っあ、あの!」  泣き出す彼女に狼狽(うろたえ)るものの、僕は彼女に何か言うべきだと思った。彼女は潤んだ瞳で僕を見つめ、首を傾げる。 「な、名前! 聞いてもいいですか?」 「あっ、はい。和倉 花純、です。和むに倉庫の倉、かすみは花に純粋の純って書きます」  和倉、花純さん。花純さんか。  知りたかった名前が聞けて、喜びに打ち震えるのだが。なぜかそのとか、妙な既視感を覚えた。  ーー「私は和倉 花純、ハタチの専門学生」  あれ……? なんだ、コレ。いつの記憶だ? 夢か……?  知るはずのないことを、既に知っているようなデジャブに見舞われていた。 「蓮くん、どうかした?」 「あ、いえ。なんでも……」  そう言って首を振ったとき。彼女が僕を見て、気安く話しかけてくれる映像が一瞬だけ頭の中に浮かんで消える。
/167ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加