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「篠原くんから、九日も意識が戻らないって聞いてたから。私、蓮くんがそのままだったらどうしようって、すごく怖くなって……っ、でも。ちゃんと目覚めてくれて……いま、すごく嬉しいのっ」
え?
お姉さんは声を震わせて、しまいにはシクシクと泣き出してしまった。
うわ、どうしよ、これ。俺、なんて言えばいい??
「な、泣いちゃってごめんなさい」
そう言って鞄からハンカチを取り出し、彼女は慌てて目頭を押さえている。
「っあ、あの!」
泣き出す彼女に狼狽るものの、僕は彼女に何か言うべきだと思った。彼女は潤んだ瞳で僕を見つめ、首を傾げる。
「な、名前! 聞いてもいいですか?」
「あっ、はい。和倉 花純、です。和むに倉庫の倉、かすみは花に純粋の純って書きます」
和倉、花純さん。花純さんか。
知りたかった名前が聞けて、喜びに打ち震えるのだが。なぜかそのとか、妙な既視感を覚えた。
ーー「私は和倉 花純、ハタチの専門学生」
あれ……? なんだ、コレ。いつの記憶だ? 夢か……?
知るはずのないことを、既に知っているようなデジャブに見舞われていた。
「蓮くん、どうかした?」
「あ、いえ。なんでも……」
そう言って首を振ったとき。彼女が僕を見て、気安く話しかけてくれる映像が一瞬だけ頭の中に浮かんで消える。
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